4人の大学生が南相馬市お試しハウスで過ごした1カ月

4人の大学生が南相馬市お試しハウスで過ごした1カ月

2月17日からの1カ月間、インターンに参加する4名の学生がお試しハウスを利用しました。学校も出身もバラバラな彼女たちが偶然に南相馬で出会い、過ごした時間はまるでシェアハウスだったとか。

参加した学生たち
左から日栄さん、東さん、大塚さん、桜井さん

復興庁が主催し、一般社団法人Bridge for Fukushimaが企画している今回のインターン。活動拠点はお試しハウスから歩いて10分ほどのところにある小高パイオニアビレッジです。取り組んだ内容はそれぞれに異なっており、小高ワーカーズベース(以下OWB)、HARIO Lumpwork Factory ODAKA(以下HARIO)、Next Commons Lab 南相馬(以下NCL)の3社のプロジェクトに参加しました。

彼女たちが取り組んだプログラム

そもそも、なぜ、彼女たちは南相馬までインターンに訪れたのでしょうか。興味をもったきっかけを聞いてみると 「被災地だから」というのが一番の理由ではないということに気づきます。

日栄さん「私は地域おこしの活動への興味からこちらのインターンに参加しました。以前、新潟の山古志村にボランティアで3泊4日過ごしたことがあります。季節が夏だったので、村の盆踊りの準備を地域の人に混ざって一緒にしたり、屋台で売り子をやったりしました。それがとっても楽しかったんです!OWBのプロジェクトは、人と関わり合いながら取り組めるのではと考え選びました。」

大塚さん「私が初めて東北で訪れたのは、宮城県山元町でした。南相馬と同じく沿岸部にあり、少し北に位置しています。復興関係のツアーで昨年のゴールデンウィークに足を運びました。その時に、復興の現状のことを全然知らないなと気づき、現地がどのように変化しているのか知りたいと思うようになったんです。東北での活動を探し、地元の人により話を聞けそうだったOWBのプロジェクトを私も選びました。」

東さん「私は京都に住んでいるため、震災に関しては東日本大震災より阪神淡路大震災の方が身近に感じます。それでも正直、距離に関係なく、どちらの震災にも興味は持てずにいました。そんな自分自身を不安に思っていたところ、大学から届いたお知らせの中に復興創生インターンを見つけました。私が興味をもったのはインタビュー冊子をつくるNCLのプロジェクトです。文章を書く仕事、地元から離れた環境で生活に挑戦してみようと思いました。」

櫻井さん「東日本大震災が起こった当時私は小学生で、特に何をするでもなく日々を過ごしてきました。ただ、高校生の頃から『このまま無関係でいいのだろうか』と漠然とした思いが引っかかったまま。そんな折に友人からインターンシップ説明会を紹介してもらい参加し、復興創生インターンと出会いました。内容以上に、大人の人たちが楽しそうに話す姿が魅力的で、やってみたい!と感じたことを覚えています。メディアではなく自分の目で震災のあった場所を知ることが大事と考えており、1カ月住み込みで取り組めるインターンに飛び込んでみました。HARIOのプログラムを選んだ理由は、小高オリジナルブランドの『iriser(イリゼ)』に惹かれたからです。地元らしさをアイテムに落とし込んでいるところが素敵だなと感じていました。」

彼女たちを惹き付けたのは、南相馬にある事業やそれを創っている人たちだと感じます。復興創生インターンとして募集をかかっているからには、これらの事業は震災があったからこそ生まれたものかもしれません。しかし今回彼女たちは、純粋に仕事として魅力的を感じたからこそ参加してくれたのだと思います。同じ地域で働く身として、このような選ばれ方はいいなと嬉しくなりました。

具体的にはどんなことに取り組んだのでしょうか。順番に聞いていきましょう。

小高ワーカーズベース:大塚さん・日栄さん

大塚さん(写真左)と日栄さん(写真右)が取り組んだのは、小高パイオニアビレッジの認知を目的としたアクションを考えること。現在の認知を知るためにアンケートを実施し、広報を行うことを決めた2人は町で人を探し、直接お話しを聞いていました。

大塚さん「地域内でどのくらいの人がパイオニアビレッジのことを知っているのかを調べました。小高に住んでいる40名、原ノ町に住んでいる40名を対象にアンケートを実施。建物としての認知だけでなく、コワーキングスペースとしての役割やどのように使ってみたいかなどを質問項目に設けました。40名というのは多くない数字に見えるかもしれませんが、やってみると小高の町中で人を見つけることは簡単ではなかったです。」

日栄さん「交流センターやぷらっとホームを中心に話を聞かせてもらいました。どの方も優しく、親切に質問に答えてくださいました。私たちが学生であること、県外から来た理由などを話すと、震災当時や避難していたころの話をしてくれました。テレビの報道と実際に聞いた話などにギャップがを感じ、現地に来なければ分からなかったと思いました。」

その他、Web上での検索流入調査なども行い、集まったデータをもとにチラシを作製、配布。データは全てOWBに報告しました。

大塚さん「 高齢化地域である小高で知ってもらうためには、オンラインでの情報発信には限界があると感じ、チラシを使った広報物を作成しました。作ったものは小高内の飲食店や施設に置かせていただきました。」

詳しい内容は今回は割愛しますが、個人的に、調査結果で特に興味深かったのは「仕事に関する悩み相談をしたい・仕事のレベルアップを図りたい」と考えている人の割合が最も大きかったこと。今後、この調査をもとにパイオニアビレッジで新しい取り組みが生れるとに期待!

2人が作成したチラシ

HARIO LUMP WORK FACTORY ODAKA :櫻井さん

HARIOにインターンした櫻井さんは、アクセサリー市場の調査をした後に、小高の特色を取り入れた商品の提案に取り組みました。もともと、マーケティングやデザインの経験があったわけではない彼女、いったいどんな1カ月を過ごしたのでしょうか。

櫻井さん「最初の2週間は、マーケティングに関する参考書を片手にひたすら調査しました。既存商品の販路の割合(オンラインなのか、店頭なのかなど)やブランドのターゲット層である20代~40代くらいの女性のライフスタイルなど・・社員さんが気になってはいたけど手が届いていなかったことを任せてもらったように思います。自分のやり方が合っているのか自信のないまま進めるのは苦しかったですが、なんとか力になれていればと思います。」

櫻井さん「後半の2週間で、小高発のブランド「iriser(イリゼ)」の商品開発に取り組みました。地域の特色をいれるために、自転車に乗ってまちを回り観察。印象的だったのは、蔵の存在です。小高は織物産業が盛んだったと話や一家に一戸の蔵があったというのには驚きました。壁の柄や瓦のかたちが可愛いかったです。 」

しかし、最終的に提案したのは魚のあんこうをモチーフにしたアイテム。彼女が通勤路で谷地さんにもらったあんこうのともあえが絶品だったことからインスピレーションを受けたそうです。また、HARIOのランプワーカーさんの個性と虹色かけあわせたギフトの提案もしていました。実現が今から楽しみです。

Next Commons Labo 南相馬:東さん

NCLにインターンした東さんの仕事は、同社の取り組みやメンバーを紹介する冊子制作。彼女はインタビューから執筆・編集を一貫して行い、NCLメンバーと一緒に冊子を仕上げました。

東さん「起業家の方々へのインタビューで掲げたコンセプトは”人を知る”です。 4名の起業家さんとNCLのコーディネーターさんにお話を聞きました。 NCLにはアロマや日本酒醸造など様々な取り組みがありますが、今回は取り組んでいるみなさんに『なぜやろうと思ったのか』を伺い、事業や起業に対する想いや人柄が伝わる内容を目指しました。」

東さん「私自身がインタビューする方を知るために、行動を裏付ける感情に着目して話を聞きました。 失敗と改善を重ねながらも、その人にしかない理由を引き出すための質問ができるようになりました。やりがいを感じたのは、聞いた話をそのまま並べるのではなく自分の言葉で考え直す作業。例えば、起業家さんの身振りや手ぶりから想いを表現しました。アロマセラピストの水谷さんが、調合したアロマオイルを瓶に詰める様子を描写した一文は、自分でも満足のいく仕上がりになりました。」

東さん「8000字にもなる文字起こし、それを3000字に凝縮していく作業・・これほどパソコンに向き合うことがなかったので、首と腰がとっても痛くなりました(笑)」

成果発表時に、彼女のつくったインタビュー本文を拝見しました。彼女へのインタビューをしていた私はなおさら、丁寧に話を聞いたことが感じられ、起業家の方の言葉遣いや温度感が伝わってくる素晴らしいものでした。 その後、西山さんが冊子全体の仕上げをし、3月31日に発刊。現在は小高パイオニアビレッジや南相馬市図書館などで配布しています。

仕事に一生懸命な彼女たちを支えたのは4人での暮らしでした。 「初めまして」と顔を合わせた初日から始まったお試しハウスでの共同生活。

東さん「個室は全部で3つ。個室を使う人と相部屋する人を相談して決めました。性格によるものかと思いますが、誰も我慢することもなくすんなり部屋割りが決まり良かったです。4人という人数もちょうど良かったかな。」

桜井さん「同じキッチンで作った同じものを食べる生活。お弁当も毎日持っていきました。家事は朝方、夜型などライフスタイルに合わせて分担。朝が苦手な私は、朝ごはんを作ってくれるみんなにかなり助けられました。」

大塚さん「普段の買い物は小高ストアを使い、休日に電車で原町までまとめ買いに行きました。 重たいお米は持って帰るのが大変だったけれどいい思い出です。 私たちはあまり使わなかったですが、コンビニもあり生活するには安心感がありました。 滞在中に小高の飲食店を制覇しようー!と結構外食も。 私のお気に入りは更紗さんの納豆オムレツです!」

原町までの買い出しから返ってくる様子
インターン先の職員のみなさんも一緒にランチタイム

彼女たちは大学1,2年生。そもそも週5日間フルタイムで「仕事」に取り組むことが想像以上に厳しかったといいます。同じ場所に通いながら異なるプロジェクトと向き合う彼女たちの関係は新卒入社した同期のようなものに思えました。

桜井さん「私や東さんはプロジェクトに一人で取り組んでいたので、お試しハウスでみんなに相談に乗ってもらえてとても心強かったです。それぞれに取り組んでいる課題だからこそ話を聞いてもらいやすかったとも思います。」

日栄さん「みんなで華金のすばらしさを味わいました。餃子を作ったり、テレビを見て団らんをしたり、コントを考えてやってみたり。完全にリラックスした時間を過ごせました。」

お試しハウスで癒しの時間を味わってもらえたことが嬉しいです!

また、プロジェクト外でも地域の人に良くしてもらったという彼女たち。3月3日、ひな祭りの日には、通勤路にある谷地魚屋さんでのパーティーに招いてもらったといいます。

日栄さん「お招きいただき美味しいお食事をご馳走してもらえて心が温かくなりました。知り合って間もない関係の方に、こんな風にしていただくことなんてないので。何気ない会話の流れで震災当時や避難をしていたときの話などを聞くこともできました。」

インターン先の社員のみなさんに連れられて、少し足を延ばしたおでかけも楽しめたようです。ちょうど滞在期間中に、常磐線の開通もありました。

大塚さん「いわきの温泉やイチゴ狩りに連れ出してもらい、思いっきり休日を過ごせたように思います。電車に乗って、仙台まで女子旅っぽくおでかけしたのも楽しかった。常磐線の開通に合わせて双葉駅の周辺にも足を運ぶことができ、自分の目で現状を見られて良かったと思います。駅のホームでは、電車を迎えました!浜通りでの遊びを満喫したと自負しています。」

小高の人々と自ら関わったり、おでかけを楽しんでいたことが伝わってきます。最終日はお世話になった人にあいさつに行ってきますー!と言っていました。確かに、彼女たちが町中をウロウロする様子を私はオムスビからこっそり見てました。帰り際に、オムスビもあいさつしてくれて嬉しかったです。

初めてお試しハウスを使う多くの人にとって、南相馬は慣れない土地だと思います。そんな場所でも、生活しながらやるべきことに取り組むんだり、地域に入り込んでいくことができるということを彼女たちが証明してくれたように思います。

ありがとうございました。
また南相馬に来てくださいね!


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