変化する支援のかたち:体育大学だからできること

変化する支援のかたち:体育大学だからできること

shihomakita shihomakita 2019年11月1日 活動事例

秋の心地いい風が吹き始めたころ、大阪体育大学から、15名の学生と6名の職員の方たちが小高を訪れました。同大学が復興支援活動を始めたのは、2011年10月のこと。震災直後は、大阪が避難先である子どもたちに呼びかけ、関西でのキャンプを実施しました。必要な支援が変化することを感じ、2012年以降は、南相馬:現地へ足を運び、これまで活動を続けられています。

住人のもとを訪れ、運動を織り交ぜた活動を行う

小学生に運動指導をする様子

「サンライズキャンプ」という名で継続されてきたこちらの活動は、学生たちが実行委員会をつくり、企画を考えています。NPO法人つながっぺ南相馬と連携し、その時々の状況に合うような内容を企画・実施してきました。

サロンを訪れレクリエーションをしました

震災直後はがれき撤去や家具の移動などの力仕事が活動が中心でしたが、次第に、仮設住宅生活する住民のもとへ訪ね、サロン活動へ参加をしたり、学生が企画をするレクリエーションを行うようになっていったそうです。3年前より学生たちを引率している木村さんに話を伺いました。

「体育大学の特色をいかしながら活動を行っています。専門の測定機器を使った体力測定をしたり、住居の清掃をお手伝いしたり。なんだかんだ、体力のいることばかりやっている気がします。学生たちにとっては、レクリエーションの実技の授業で学んだことを実践する場になっており、相互にとっていい取り組みだと感じています。」

今回は、サロン活動への参加や体力測定だけでなく、地域の運動交流会を企画したり、トウガラシの収穫のお手伝いなどエネルギッシュな活動が行われました。実際にどのように、みなさん動かれたのでしょうか。

【活動スケジュール】

・1日目:午前 陽だまりサロンにて活動プレゼンと小高交流センターの見学
     午後 老人ホーム「梅の香」訪問 窓ふき清掃とレクリエーション

・2日目:午前 小高区4小学校にて地域ふれあい運動交流会
     午後 小高ぷらっとホームでトウガラシの収穫作業
     夕方 被災地見学

・3日目:午前 大町キラキラサロンと大富地区でのグランドゴルフ(2グループに別れて活動)
     午後 小高体育センターで高齢者の体力測定
     夜  かしまスポーツクラブにて、子どもの運動指導

・4日目:午前 小高小学校体操指導
     午後 陽だまりサロンにて、最終ミーティング、帰宅

体力測定を行う様子

学生のみなさんからたくさんの感想をいただきましたが、共通していたことは「実際に来て、見るのではニュースや話を聞いているだけでは分からなかったことを感じた」ということ。

「現地の人の声を聞くことはとても大事だなと思った。復興しつつもあるが、まだ回復していないようなお店や若い人の戻りだったり、私たちの勝手なもう復興しているだろうという想像はただの思い込みで風評被害などもまだされたりしていることが分かった。そういう所の正しい現状を多くの人に話すことが被災地に行った私たちの役目だと思った。」

「テレビや新聞でしか被災地の様子を目にすることがなく、8年も経った今はテレビや新聞でさえもほとんど取り上げなくなり、現状を知ることはできなかったので、私自身の想像では、8年も経ち町の多くは当時のように戻っていると思っていました。ですが、参加して被災者の話を聞いたり、被災地の様子を見て、福島県でも地域によって、街の復興具合も現状も全く違っていることを知ることができました。

小学校で実践授業を行ったり、レクリエーションの企画をした経験が、大きな学びだったという学生さんも多かったようです。

地域運動会の様子。下は5歳、上は71歳と幅広い年代の方が集まりました

「スポーツを楽しむ中で初めは全く話さなかった子が楽しそうに輪の中に入って遊ぶ姿を見て、スポーツには知らないうちにコミュニケーションやチームワークが取れるなどの素晴らしいメリットがあることを感じました。ある子が『来
年も来ますか?』と話しかけてくれた時に、来年までに倒立が出来るようになってね、と私もつい、答えてしまいました。なかなかできない経験の中で無邪気な笑顔溢れる顔が見られて小学生の力は偉大だと思ったし、私に自信をくれた小学生の言葉は忘れません。」

「体育大生との交流の機会を大切にして下さり心の底から楽しんでくださる様子を見て、人の生きる力の強さや、スポーツで繋がる輪の素晴らしさを実感することができました。」

「先生方は、もう活動の終わり時かな…って言っていたけどまだ終わらせるべきではないと思う。私は今回の活動で本当にたくさんのものをもらった。大阪に帰ってきてから実際に周りの人たちに話すと、もっと詳しく教えて!と興味を持ってくれる人、来年必ず行くと決意してくれた人、涙を流して話を聞いてくれた人、沢山いた。今回行けなかった人達にも体験してほしい。自分たちも伝えてはいくけれど、実際に行ってみてしか感じられないこともある。こういう経験の場を学びの場を無くさないでほしい。」

南相馬市が、彼らのような学生にとっては学びの場であると同時に、私たちにとってもは伝える・知ってもらう場になっていること、双方にとって、出会いの場になっていることをとても嬉しく思います。

「 神戸が被災地と呼ばれることがなくなったように、南相馬や福島が被災地と呼ばれなくなった時が、復興がおわるときではないでしょうか 」という言葉には、うんうんと頷き、励まされました。いつも南相馬にいる私たちが、被災地だからということを、いい意味で意識しすぎず、できることを積み重ねていきたいと感じます。

引き続き、体育大のみなさんらしく、南相馬と関わり続けていただけると幸いです。また、いつでもお待ちしております。